zatta

日常や感想等雑多に書き残す

読んだ本たち

前回から完全に3日坊主になってしまったけど最近読んだ本の感想などしたためます。

 

愚かな薔薇/恩田陸

夏が近づく季節、母方の故郷・磐座を訪れた奈智。十四歳になると参加することになる二か月に及ぶ長期キャンプは、「虚ろ舟乗り」の適性を見極めるためのものだった。キャンプの本当の目的を知らないまま参加した奈智は、磐座の地や両親の死にまつわる因縁、謎めいた人物たちに翻弄されていく……。恩田陸が放つ、吸血鬼小説の新機軸! SF長編。

Amazonサイトよりあらすじを引用。

SFらしい。

あまりSFのことに造詣が深いわけではないので、はっきりとは言えないけどSFと呼ぶにはファンタジーすぎる気がする。というよりいつもの恩田陸少女小説!という感じ。私は恩田陸の美少女主人公小説が好きなのでとても楽しく読めたけど、SFを期待すると肩透かしを食らいそうな内容でした。

思春期のある種の潔癖さが超~~~具体的に描写されていてよかった。ファンタジーと現実の絶妙な比率がうまくてどんどん引き込まれるし、長編なので読み応えがあります。

『子供たちが恐れているのは、自分が決して特別な存在ではなく、これまで地上に誕生してきた無数の生命のひとつに過ぎず、これまで存在してきた生命と同じように生まれて消えていく、という事実なのだ』

なんだかすごくわかりみがある文章では…??吸血鬼が存在する世界ならではの話ではなく、多分誰しもこの恐れって感じたことがあると思うし(作中ほど高尚なものではなくとも)いい大人なのに感情移入してしまった。

最後も恩田作品にしては尻切れとんぼ感は薄かったように思います。でも結局なんだったの?ってなる尻切れとんぼ感、嫌いじゃないんだ…

 

骨を彩る/彩瀬まる

十年前に妻を失うも、最近心揺れる女性に出会った津村。しかし罪悪感で喪失からの一歩を踏み出せずにいた。そんな中、遺された手帳に「だれもわかってくれない」という妻の言葉を見つけ……。彼女はどんな気持ちで死んでいったのか――。わからない、取り戻せない、どうしようもない。心に「ない」を抱える人々を痛いほど繊細に描いた代表作。

短編集だけどそれぞれ繋がっている的なやつでした。

シリアスな内容だけど文体が柔らかいのでず~んとすることなく読めました。彩瀬まる作品ははじめて読みましたが非常に美しい文体で日本語のすばらしさを再認識。

最後の話が物語の締めとして一番説得力があり、「骨を彩る」という意味がわかって泣いちゃった。その話も思春期の話ではあるので私がそういうのに弱い説。

自分にとっての当たり前が違う人と、どうやって付き合っていけばいいのか。関わりがない立場から強い言葉で介入しようとする愚かしさとか。考えさせられるお話で自分の中の視点がまた一つ増えたような気がします。

 

嚙み合わない会話と、ある過去について/辻村深月

あなたの「過去」は、大丈夫?
美しい「思い出」として記憶された日々――。
その裏側に触れたとき、見ていた世界は豹変する。
無自覚な心の内をあぶりだす「鳥肌」必至の傑作短編集!
大学の部活で仲のよかった男友達のナベちゃんが結婚するという。だが、紹介された婚約者はどこかズレていて――。
「ナベちゃんのヨメ」
国民的アイドルになったかつての教え子がやってくる。小学校教諭の美穂は、ある特別な思い出を胸に再会を喜ぶが……。「パッとしない子」
人の心裏を鋭くあばく傑作短編集

こっちの短編集は続いてるわけじゃないけど内容としては傷つけられた!ないがしろにされた!という過去を持つ人たちと無意識の加害性の話で統一されています。

この無意識の加害性というのがね、悪気のないものなのでね。やはり人によって物事の捉え方は様々だし加害者と被害者(という区別は語弊があるけれど…)どちらの言い分もわかるなと思ってしまった。

どちらが正しいかと言われてもわからないし、悪意はないけど嫌なことされる不快感もわかっているし、だけど気にしすぎでは?と思えるような描写もたくさんあって…う~~~~~んとなり、読後感はもやもや。結論、人は人!自分は自分!と割り切りたいけど、読んだ後にはとてもじゃないけどそういうスタンスでいられないというか、ある程度そういう割り切りも必要だけど相手の気持ちを慮る姿勢を忘れるなよとなってしまうな…

 

以上!